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ラグランジュ-3-0、艦内。
人もまばらになっている食堂で、2人は対峙していた。
事の始まりは、偶然2人が休息に来た為に顔をあわせる事になった。
それだけだった。
互いが入れ違う様に休暇を取ったため、
14日ぶりの再会でもあった。
その間、アレクセイ・ハプティズムはイシスが行った決断を聞き、
空いた口が塞がらなかった。
国家、アザディスタン女王への着任。
それでもマイスターになる為に支障の無い様に策を講じた展開。
それでもアイツは戦うというのか。
顔を見たらアレもこれも聞いてやろう。
そもそも女王でいる方がいいんじゃあないのか?
国を背負いながら戦えるのか!?
ぐるぐる回っていた思考が
なんと、本人を見た途端に
アレクセイの中で言葉にならなくなっていたのだ。
「うーん…なんて言ったらいいんだろ?」
「…あ…ティエリアか誰かから聞いたのか?」
「…ま、そんなとこ。」
「なんだ。もうアレクまで伝わってるんだ。」
少し拗ねたような素振りで話すイシスに
今までと全く変わりのない空気を感じ、
アレクは拍子抜けしていた。
「ってかさぁ、オマエ、女王って自覚あんのか?
なんかさ…もっと…こうー…」
「普段からそんな振る舞いなんて出来る訳ないだろう。
アレクこそ、俺に何期待してんだか!」
「あぁ!?それでいいのかぁ?
国民カワイソーじゃねーか!」
「女王だろうが!ガンダムマイスターだろうが!
軍人だろうが!
要は『人』なんだよ。
それがわからないなら、『人々』の前に立てないさ。」
テーブル越しに、真っ正面から見据えられたアレクは
ぐうの音が出ない位圧倒されていた。
『王』の空気を生まれ持っているとはこういう事なのだろうか。
「じゃあさ、もっと自分を大事にしねーのか?
こんなとこで命曝け出して戦って…
俺がこれを知ったら不安だけどな。」
「策は講じてある。…それに…
国は『王』の所有物じゃない。
国は人で成り立っている。
それをわかってもらわなければ…アザディスタンは取り残される。」
それを聞いたアレクセイは席を立ちながらイシスを見つめた。
「…イシス…」
「ん?」
「俺さ…『王』としてのオマエも心配だけどさ…
『イシス・イブラヒム』も心配なんだよ。」
「…『刹那』の名前を貰える程度には
実力つけてるつもりだけどな?」
「そうじゃねーよ。」
言っている事の意味が分からない、と言うような表情のイシスに
アレクは心の重みを吐き出す様にイシスへと伝える。
「オマエはさ、真っ直ぐすぎるんだ。
一緒にいるとヒヤヒヤするんだ。
…目が離せねーんだよ。」
「…戦う人間の身を案じるのか?」
「じゃあ、イシスは皆の心配をしないの?」
「ナターシャ。」
「…スメラギ…」
2人の話に不意に話に割り込んできたのは
双子の姉、ナターシャだった。
「ミッション中じゃないんだから、ナターシャでいいわ。
実力云々よりも以前に、『仲間』を心配するのはいけない事かしら?」
「…そうじゃない…そうじゃないんだ…
只…みんなある程度覚悟の上で戦っているのに…
心配されると…自分が弱くなっていくんじゃないかと。」
「イシスは…不安になるのね…」
「んーな不安になるほど重荷か?俺の気持ちは?」
「違う!」
「じゃあ、ありがたく受け止めて、戦えばいーんだよ。
それで、生きればいいじゃねーか。」
に、と悪戯っぽく笑うアレクにイシスもつられる様に笑顔が出た。
笑顔を確認できたアレクは安心した様に食堂を後にした。
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食堂を後にしたアレクの背を眺め、
ナターシャはイシスと向かい合っていた。
「イシスの心配は…他にもあるんじゃないかしら?」
にこ。と微笑みながら向かい合わせに座るナターシャに
イシスは顔を上げた。
「…ここ最近ね、スェウがスランプなのよねー。」
「………え……?」
「あなたが地上から戻ってくるまでの間、
随分と腕が落ち気味でね…。
あなたが国王就任してからだったかな?
…イシス…ラグランジュにあがってきてからスェウに会って話した?」
「…いや…話するタイミングのがしてるっていうか…さ、
最近、スェウに話しかけづらいんだ…。」
「珍しいわね…どうかした?」
「スェウは…俺がここに来たときからやたら心配されてて…
今回の件でも、気にかかってるらしくてさ。」
「兄みたいなものねー。
スェウも、どう話していいのかわからないのかしらね。
今なら、射撃訓練してるはずだから。
顔見て、話してみたら?」
「うん…そうする…。
ありがとう。ナターシャ。」
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イシスは、射撃訓練ルームにいたスェウを眺めていた。
スェウは、ライフルを構え、長距離射撃のトレーニング中だ。
スェウは、ひとしきり撃ち終わった後、
自分に納得がいかないのか短く舌打ちをした。
それを後方の壁にもたれながら見ていたイシスは、
おもむろに壁に据え付けられていたハンドガンを手に取り、
マガジンを差し込むと、ブースに入り
ターゲットをセットした後、射撃を始めた。
撃ち終わっていたスェウは、隣にイシスがやってきた事に気付き
イシスの射撃を逆に眺める。
イシスがマガジンにある銃弾を全て撃ち終わった後、
防音をかねたヘッドフォンを外す。
「…いつから…帰ってきてたんだ?」
声をかけたのは、スェウからだった。
「…昨日。」
端末に射撃記録のデータを打ち込みながらイシスは答えた。
同時に、端末にある現在時点の一覧データを呼び出したイシスは
その数値に目をやりながらスェウに声をかける。
「…どうした…?
最近、命中率落ちてるじゃないか…
今まで70%台なんてなかったのに…
何かあったのか?スェウ…?」
振り返ったイシスは思いのほか近くにいたスェウに軽く驚いた。
「オマエが…それを聞くのかよ…」
「…俺が…心配…?」
自嘲気味に小さく笑みを浮かべたイシスに
スェウは苛立ちを隠さなかった。
「今のオマエが心配じゃなくて何が心配なんだよ!」
「今は自分の心配してろ。
じゃなきゃ、『ロックオン・ストラトス』に
『刹那・F・セイエイ』の背中は預けられない。」
「好きなヤツの心配して何が悪いんだよ!!!」
「ーーーーーは!?」
うっかり怒鳴ったスェウは自分の口から出た言葉に
自分自身でも驚いていた。
しまった…!
スエゥは心の中で叫んでいた。
自分自身に言い聞かせていた。
父親から『ロックオン』のコードネームを貰うまでは言うまいと。
そんな自分の前でイシスはみるみる顔を赤くする。
同時に自分の顔が赤くなるのが自分でもわかった。
赤くなったイシスはそのまま俯いた。
「あー!…っと…あの…」
「気持ちは…嬉しいよ…
でも…今、その気持ちは貰えない。」
「…ごめん…イシス…
今…言うときじゃないよな。」
ごめん。と小さく呟いたスェウは
そのまま部屋を後にした。
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「スェウ…謝るのはこっちなんだよ…?
アンタが先に言う事じゃないんだからな…。」
自分の気持ちを振り切る様に
イシスは新しいマガジンを銃に差し込んだ。
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あーあ…とうとうスェウ言っちゃったよ…PR
スェウは気が気じゃないですよね…
なのにイシスってばwwwwwwwwww
そりゃ
お前なぁちょっとは気付けよ俺の気持ち
みたいな感じになりますよねぇ。
隠しは携帯から見られないんですね・゚・(ノД`)・゚・。
>銀サチさん
そりゃあね!スェウからすれば身近で気が気じゃないんですよ。
イシスも気付いてるんでしょうかね?wwwww
これからこの2人がすれ違ったりかち合ったり…www