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ティム・エーカー。
父はかつてカスタムフラッグのパイロットとして活躍していた人物だ。
父親の名はグラハム・エーカー。
帰りの遅くなる父に夕食を作るべく学校が終わってから
マーケットへと買い出しに向かった帰り道。
この街に最近張り出された一枚のポスターにティムの視線は釘付けになった。
来週末、近くのカリフォルニア基地で行われるフェスティバルのポスターだ。
ユニオン軍、フラッグ部隊
カリフォルニア支部
11月、そのイベントは行われる。
2年に1度、支部勤務の人間とその家族
そして周辺住民に対して基地を解放してのイベントがある。
流石に戦況厳しい時期には開催は中止されるが、
戦況が落ち着いている現在、それは開催されていた。
地域住民に対して安心を与える為に公開範囲を限定しての
軍備展示など、ちょっとしたお祭り気分になる。
その最大の目玉とも言えるフラッグ機の
デモンストレーションが行われようとしている。
そのフラッグのパイロットは自分の父親なのだ。
そんなところへ、パン!とクラクションが鳴る音がした。
振り返ったティムは、その人物が自分に最も近しい人物である事に
小さな驚きを露にした。
「…とうさん!今日は遅くなるんじゃなかったの?」
「思ったより早く終われてな。
見たら、前をお前が歩いていた。」
そう言いながらグラハム・エーカーは
乗るか?とジェスチャーをする。
それにティムは軽く首を振り否定を表した。
「いいよ。歩いて帰れる。」
そう簡潔に断ると、ティムは再び買い物袋を抱えなおし、
自宅へと足を運んだ。
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その日の晩、夕食を食べていたグラハムは息子に声をかけた。
「どうだ。学校は。
卒業後の進路、そろそろ決めなきゃいけないだろう?
先生とも話しなきゃいけないなら、日にちの段取りをしなくちゃな。」
「うん…」
歯切れの悪い返事をする息子に父はいぶかしげな表情を浮かべた。
「なんだ?ハイスクールへ行く気持ちがないのか?」
「そうじゃない。だけど…」
「漠然としている。…か。」
「うん…」
何ともいけない空気が親子の間を漂っていた。
そこで、グラハムは話題を変えた。
「そうだ。今日、帰りに会った時
基地イベントのポスター見てたろう?」
「あー…うん。
またやるんだなーって…思って。」
「また、行かないのか?クラスメイトもみんな行くんじゃないのか?」
「そう…だよね…みんな行くって言ってた。」
「今年位は来てみないか?
カタギリも来れるらしいぞ。」
グラハムは、息子がなついている親友の名を口にしてみた。
実際、研究所長にまで昇格してしまい、多忙を極めている
ビリー・カタギリがイベントに会わせて基地に来れることは
大変珍しかったのだ。
「…おじさんが?」
「ああ。」
「でも、この間おじさんここに来てたじゃないか。
エプロンもって帰っちゃったけど。」
エプロン…その言葉にグラハムは軽く吹き出しつつも
息子の話に乗った。
「ああ!あのエプロンか!お前が貰ったドーナツショップの!
って、アレもって帰ってたのかアイツ!」
「うん。だってウチにないもん。」

サムネイルクリックで拡大表示「じゃあ、ついでに返してもらえ。
…今度の週末、行くか?」
ククク、と笑いながら返答を求める父親に対して
どうしようかと少し考えた後、ティムは返事をした。
「うん…今年は行ってみようかな…」
その返事にグラハムは内心驚いていた。
というのも、ティムは11歳の時、つまりは4年前、
母親を…つまりはグラハムにとっての妻を
その基地で起こったソレスタルビーイングの介入騒動で失っていたからだ。
その騒動以来、ティムは頑に基地へ近づこうとしなかった。
突然母親を失った息子へ、その基地で行われるイベントに
無理矢理連れて行けるとは到底思っていなかった。
なので、拒否の返事が来ると見込んで声をかけた。
「珍しいな。お前が基地に行こうと決めるなんて。」
「父さんが誘ったんだろう?
…それに…悔しいし。」
「…悔しい?…何がだ?」
「『刹那』だよ。」
「…あの少年か…。」
グラハム・エーカーは息子の口からその名前が出てくると
2年前に偶然に出会う事になったその名前の少年を思い浮かべた。
正確には『子供の方』という事になるのだろう。
刹那・F・セイエイ
父親にとっては大事な空を奪い、
また、自分に対して『生きろ』と言葉を投げかけた人物。
その子供と、今目の前にいる息子が邂逅した。
その影響は息子、ティム・エーカーにとって
彼の人生の中で大きなものになっていた。
それと今の『悔しい』がどう繋がるのか聞こうとしたところ
本人の口からその理由が飛び出してきた。
「父さんと、『刹那』は同じ立ち位置にいるんだと思うんだ。
でも…僕は違う。
僕だって…同じ場所に立ちたいんだ。
僕と同じ位のアイツが…父さんと対等に居れるのがなぜのか判らないんだ。
…だから…」
「基地に行けば、何か判るかもしれない…?」
「うん。」
「…そうだな…判るかどうかはお前次第だ。」
「僕次第?」
グラハムは目を細めて頷いた。
その後、悪戯を思いついた子供のような表情を浮かべ
ティムの顔を覗き込んだ。

サムネイルクリックで拡大表示「じゃあ、お前が来るなら…フラッグのコクピットに乗せてやろう。」
「…いいの?」
おずおずとティムは父親の顔を見つめ返しすと、
目の前の父親は少年のような笑みを浮かべていた。
「私だって、子供の頃空軍基地のイベントで
操縦席に座らせてもらった事があった。
お前よりもずっと小さい頃だったか…
だから、その位は出来るだろう。
…それに、今回のイベントで
フラッグのデモンストレーション飛行を担当するのは
他の誰でもない、私だからな。」
そう言って、グラハムは最愛の息子に笑顔を差し出した。
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6/3 またもや!銀サチさんからステキイラストを頂いちゃいましたのでアップです!
エプロンの元ネタイラストも強奪して帰っちゃいました!(爆)
(あ、許可は頂いてますよ。ご安心ください〜)
毎回ホントにステキな親子イラストありがとうございますー!!!!ヽ(>▽<)ノPR
何か 泣きそうなんですけど・゚・(ノД`)・゚・。
絵また描き直なおして、これ強奪してもいいでしょうか・゚・(ノД`)・゚・。うわぁぁん

私の妄想が色んなところに散りばめられていて あぁぁぁんTOMさん素敵すぎる
銀サチさんの妄想も楽しいのでどんどんヒントにして行きたいのですがいいでしょうかね?
今回もうっかりエプロンの話題を挟んでしまって…うわわわわ…orz
ティムの話は銀サチさんならどんどん持って行ってやって下さいなー♪
イラスト、毎回楽しみなんですよーヽ(≧▽≦)ノ