「あれ?ティエリア。今日は一人じゃないんだな?
また00を眺めにきたのか?」
格納庫でノーマルスーツを着た青年がティエリアに話しかける。
格納庫は宇宙空間と同等の装備が無いと入れない。
文字通り、壁一枚向こうが宇宙空間なのである。
ティエリアとイシスはパイロットスーツに着替えていた。
「ああ、紹介する。
この子は、イシス。最近ここへやってきた。
イシス、彼は今ガンダム4機の整備と
データ採取に協力してもらっているダグラスだ。
これからいろいろ連絡を取ったりする事もあるだろうな。
2人とも宜しく頼む。」
ティエリアが2人の間に入り、紹介をすると
どちらともなく宜しく、と挨拶が交わされる。
「ダグラス、00の状態は相変わらずか?」
ダグラスと呼ばれた青年はうーんと唸り
溜息まじりに報告する。
「相変わらずだんまりですよ。
過去の思い当たるデータを全てぶつけてみてますが…
うんともすんとも言いません。
これじゃあ太陽炉のロックも解除できないから
何も出来ないですよ。
やはり、マイスター本人の声と網膜が無いと…」
「やはりそうか…」
ティエリアも溜息まじりにこたえる。
「…声と…網膜…?」
それまで黙って2人のやり取りを聞いていたイシスが
確認する様に2人に問いかけた。
「ああ、ガンダムは基本的にマイスターの声と網膜を認証して
太陽炉の起動を開始する。
それまでに擬似的に
プライオリティをプトレマイオスに移行する事があっても
それはマイスターがガンダムから離れて
ミッションをこなす間…つまりは
あくまでもミッションの流れの中にすぎないから
マイスターがいないとただの金属の塊だ。」
ティエリアがイシスに説明をする。
「ダブルオー…ガンダム…
父さんの…機体…」
ティエリアの説明を聞きながら
イシスは00を見上げ、呟いた。
逡巡した後、イシスは2人に問いただす様に質問を投げかけた。
「じゃあ…声と眼があれば…
これは動くんだよな?」
「ああ、声の認証は体調やその時のマイスターの様々な状態で
かなり曖昧にしてあるけど…
網膜は…コクピットに座った状態で常に同じ状態の瞳を読むから
本人に来てもらわないと無理なんだよ。」
ダグラスがイシスに少し困った表情で説明をした。
「そのマイスターがもういない…
力づくで太陽炉を外したら…データ採取どころじゃあ無いくらいに
破損させる事は火を見るより明らかだ。」
ティエリアが追加で説明をする。
それだからこまってるんだよねー。と
ダグラスが眉を寄せながら呟くのを尻目に
イシスが再び00を見上げる。
見上げる様子が目の前にいる人物を
父なのか、子なのか…境界線をあやふやにしそうになる。
イシスがパイロットスーツを着ている事もそれを助長しているのだろう。
ティエリアが言葉も無くイシスを見やっていたその時。
イシスが意を決した様に口を開く。
「ダブルオーのプライオリティを…」
ティエリアがイシスの発した声と言葉を耳にし、
驚愕に眼を見張る。
「トレミーより刹那・F・セイエイへ…」
そう…その声は…紛れも無くイシス・イブラヒムの父、
ソラン・イブラヒム=刹那・F・セイエイのものだ。
親子だから?いや、それだでは決して無い。
状況が判らないまま、目の前の子供は呪文を唱える様に声を上げる。
「ダブルオー、起動する!」
その声に応じる様に00の太陽炉が20年ぶりに唸りをあげる。
同時に今まで開く事の無かったハッチが
マイスターを迎えるかの様にゆっくりと口を開けた。
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ここで出てくるダグラスは当方オリジナルのキャラです。
本当はイアンかミレイナを出そうかと思っていたのですが…
ミレイナはまた別件で出したいので
ここでオリジナルを出さざるをえませんでした。
ちなみにヴィジュアル的には
イギリス系の20代半ばの好青年という感じですね。