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3日後、スェウはラグランジュへ帰艦していた。
ちょうど、地上へ降りる準備をしている父親と通路で出くわしていた。
「あれ?父さん。これから帰るんだ?」
「ああ、入れ違いだな。…母さんは?」
「あー、出る時にラボに向かってたけど…
父さんが降りる頃には家に帰ってるはず。」
「アーサは…相変わらず忙しそうだな。」
優しく目を細める父親に、スェウはふと
心のどこかに引っかかるものを感じていた。
「上がってくる前に…母さんにも聞いたんだけど…
父さんは…どうして…」
「アーサが良かったか…か?」
「…え?」
「はは。お前もそんな事聞いてくる様になったか。
俺も歳とっちまうよなぁ。」
苦笑しながら父、ライルは成長した息子の正面に立つ。
「誰も、コイツだ。って思えるヤツはいるさ。
そう言うヤツにいつどこで会えるかは判らない。
後々、違ったとしてもその時の気持ちは真実だ。
互いの気持ちがわかりあえれば正解…かな。
それが、アニューであり、アーサだった訳だ。」
「…どっちもよく判んない事言うなぁ…」
「そりゃそうだ。こう言うものはな、経験して
自分の身に付かないと判んないものなんだ。
お前、今までも付き合いしてたことあったじゃないか。」
「そりゃあ…そうだけど…」
「今回は違うってか?」
ぐ。と言葉を詰まらせたスェウにライルは真剣な目で諭す様に
言葉を告げる。
「…イシスはやめとけ。」
「…!…なんで!?」
ライルは軽く溜息をついた。
「…やっぱりな…」
「…ヤマ…かけたな…」
父親に嵌められたスェウはライルを睨む様に見据える。
その視線を受け止めながらライルは言葉を続ける。
「あいつは、お前が思うよりも
もっとややこしい相手だ。
お前にそれを受け止められるだけの器があるか?
支えられるだけの力があるか?」
それだけ告げると、ライルは「時間だ。」と一言残し
通路を移動した。
「…それでも…俺は…アイツを…」
通路に残された息子は気持ちを持て余したかの様に
右手を握りしめ、一人呟いた。

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