乗り換え用のステーションには低重力が施されたエリアに
少しの商業施設が組み込まれている。
(現在で言う空港ターミナルの施設のようなものである。)
乗り換えに伴い、空き時間を有効利用するための様々な施設が所狭しと並んでいて
低重力で無ければ宇宙空間である事を忘れそうなにぎわいである。
その中をつややかな濃い紫の髪を後ろに束ね、
眼鏡をかけた中性的な青年と
癖のある黒髪の少年が歩いている。
ティエリアと刹那・F・セイエイこと
ソラン・イブラヒムの娘、イシス・イブラヒムが歩いている。
そう。一見少年に見える黒髪の人物は少女なのである。
「なぁ、これからどこに向かうんだ?」
口調こそ少年のそれであるが
一人で生きて行かざるをえない状況に置かれた身としては
自分の性別を迂闊に判断させないのも自己防衛手段の一つなのだろう。
そんなイシスにティエリアは答える。
「これから連絡用シャトルに乗り換えて
ソレスタルビーイングの施設である
『ラグランジュ3-0』に向かう。
そこで君に見てもらいたいものがある。」
「ラグランジュ…スリーオー…?」
「そうだ。ソレスタルビーイングが隠し持っている
宇宙設備の一つだ。
そこに君のお父さんを呼ばなければいけない原因になったものが置いてある。」
「原因になったもの…?何があるんだ?」
「今ここでは言えない。機密事項だからね。」
そう言っているうちに、2人はシャトルの発着場に到着した。
「ここからは宇宙空間の領域に入る。
これから、ラグランジュ3−0に向かう。
そこで会うメンバーはこれからミッションをこなす重要な仲間になる。」
「仲間…?」
「そうだ。僕の…そして刹那、君のお父さんの仲間もいる。」
「父さんの…」
少し黙ったあと、ティエリアの腕を掴みながらイシスが問いただす。
「そこには…父さんを知ってる人がいるんだな?」
「ああ、勿論。」
「俺は…ソレスタルビーイングにいた頃の父さんを
あまり知らない。
あまり多くは話さなかったから。
だから…知りたい。
…ソラン・イブラヒムが『刹那・F・セイエイ』として生きていた
その時の父さんの姿を。」
「…そうだな。あそこにはあいつを知ってるヤツがいる。
お前の姿を見たら驚くだろうな。」
なんといっても、父親と瓜二つだからな。
そういいながら振り返り微笑んでやると
イシスは不安を隠しきれない様な表情をしながら
ティエリアの腕を掴んでいた手を離した。
「父さんに…似てるだけじゃないんだ…」
「…?どういう…?」
イシスの呟きに疑問を投げかけたが
最後まで聞けないうちにシャトルの搭乗を急かすサインが出る。
2人は急いでシャトルへと向かった。
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