20-years-after

「…！分離した！？」

ティムがそう叫ぶと同時にフラッグの機体は急旋回を始めていた。

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「片方を打ち砕いたら即大きい方を撃って落下進路を変える。
動きが激しくなるぞ！気をつけろ、ティム。」

その言葉を聞いた途端に、ティムは表情を引き締めて
コクピットのシートを強く掴んだ。

それを確認したグラハムは、フラッグの機体を目標である
小さい方の破片に向けてビーム砲を構えた。

その時。

思いのほか速度を上げ落下してきた小さい方の破片が
フラッグの肩口から右腕、そして右足にかけて直撃した。
その瞬間、コクピットに大きな衝撃が加わった。

「うあっ!!!」
「うわあぁっ!!」

コクピットに座っていたグラハムとティムが叫び声をあげた。
次の瞬間、フラッグの動きが止まった。

「父さん!?」

シートに座っているグラハム・エーカーの反応が無い。
今の衝撃で動きが一時的に封じられたかのようだ。
当然のごとく、フラッグは自由落下を始めた。

「父さん！！！起きて！落ちてるよ！！！」

ティムは大慌てで父に叫んだ。
未だ反応が無い父親と一緒にこのまま落ちていくわけにはいかない。
ティムは管制室に居るであろうビリーへと救いを求めた。

「おじさん！聞こえてる！？父さんが！！」

「聞こえてるよ。まずはフラッグの落下を止めよう。
ティム、お父さんの右手はどうなってる？」

「操縦桿握ってる。」

「じゃあ、右手を払って右手操縦桿を押し上げながら、
人差し指にある青いスイッチを押してくれ。
右手からアンカーが出る。
右側に鉄塔が見えてくるはずだ。そこにアンカーを撃って
フラッグの落下を防ごう。出来るね？」

「…やってみる。」

そう言った時点で、既にティムの右手は父の手を退けて
ボタンに指がかかっていた。
ティムの右手に力が籠る。

「俺は……フラッグファイターになって…」

キッと前を見据えて、彼は決意を口にしていた。

右側に鉄塔が見えてきた。
ボタンに掛けた指に力を込める。

「今だ！ティム！」

「空を飛んでみせる！！」

ビリーの声とともにティムは声をあげ、
力をこめてボタンを押し込んだ。
フラッグの右手からアンカーが射出される。
鉄塔にアンカーが絡み付く。
ワイヤーが勢い良くフラッグの機体を引っ張る。
フラッグは空に浮かぶ凧の様に勢い良く機体を振り回される。

「わっ!!!」

ティムの叫びが上がる。

同時にティムのヘルメットをいきなり押さえつけられる感覚があり、
次の瞬間、ティムの身体が後方に押しやられる。
シートに座って動かなかったグラハムの身体が前に身を乗り出す。

「父さん！」

「よくやった！ティム！」

ティムが後ろに追いやられながら横目に見た父親は
に！と子供がいたずらをするような笑みを浮かべると
息子に声をかけながら、左手で操縦桿を操り、
即、破片を撃ち、その落下方向を変えていた。

「カタギリ！もう一つの破片は？」

「大丈夫なのか！？グラハム！？」

「バックラッシュがきたよ…右手が持っていかれた。
右足の操作が上手く行かないな。」

グラハム・エーカーの登場するカスタム・フラッグ。
カスタムと呼ばれるだけに、
彼専用にカスタム、チューンナップが施されている。
基本的にフラッグ機全般には、登場するパイロットにあわせて
チューンナップが出来るような構造ではあるが、
グラハム・エーカーの乗るカスタムフラッグは
ビリー・カタギリによって、それ以上のカスタムが施されていた。
普通なら、衝撃を受けた場合に、パイロットへの身体的負荷を軽減させる為に
反応速度はコンマ数秒から１秒間にかけて一定時間の対衝撃の為の
『遊び』と呼ばれるタイムラグを持たせてある。

対衝撃へのタイムラグは転じて攻撃までのタイムラグと同じである。

グラハムは敢えてそれを最小限に落としてあるのだ。
構造的なタイムラグしかないその機体から
ダイレクトにパイロットの身体へのフィードバック。
現役の時にはそのおかげで血を吐く事まであった。

それでも、彼はそれに伴うメリットを選んだ。

その設定はフラッグの根底的な部分からカスタムされてあるので
設定を変更させる為にはほぼ分解に近い部分から変更させる必要があった。
そのおかげで、今彼が乗っているカスタムフラッグも
現役当時の設定のままなのである。

つまりは、今右手に受けた衝撃がそのままパイロットである
グラハムの右腕を直撃している。
操縦桿から手を離す間もなかった。
おかげで今、彼の右腕が使い物になっていない。

「ティムもいる。後は他の機体を出そう。帰還してくれ。」

「だめだ。それじゃ間に合わん。落下物までの距離を教えてくれ。」

「…わかった。」

落下するもう一つの破片をモニターで確認しながら
距離をビリーが知らせた数値でも確認する。
確認した途端にアンカーを外す。
同時に粒子を撒きながら、フラッグ機が勢い良く飛び出す。

コクピットでは、ティムがグラハムに寄り添う様にしてシート脇にいた。

「目標を視認。追撃する。」

そう言うや否や、フラッグのモニターは目標物である
折れた翼をモニター上のスコープに捉える。
利き手である左腕を動かし、破片を一般客がいる方向へ落とさないよう
注意深く狙いを定める。
ティムはその横顔を垣間見た。
父のその表情は楽しくて仕方ない様にも見えたが…
眉間には険しい皺が刻まれていた。
おそらく、右腕が痛むのであろう。
トリガーを引くグラハムの邪魔にならないよう
本人が気付かないうちにティムも息を潜めていた。

トリガーが引かれる。

ビームライフルが尾を引きながら目標物へと真っ直ぐにのびる。
流石、フラッグファイターとして名を馳せてきただけの事はある人物だ。
落下方向が計算された位置への的確な射撃。
計算通り、人気のない場所へ落下方向が変更される。
同時に通信にステルス機本体の不時着が知らされた。

カスタムフラッグのコクピットでグラハムとティムの親子は
揃って息をついた。

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基地内、滑走路。
そこにカスタムフラッグは着地していた。

「ティム、ベルトは外したか？」

「うん。」

ティムの腰にまわしてあったベルトが外れているのを確認した後、
グラハムはウィンチロープを使い、先に地上へと降り立った。

「いいぞ。ティム。　降りてこい！」

父、グラハムの合図を確認したティムは
モーター音とともに上昇してきたウィンチロープに手と足をかけ、
降下スイッチを押した。
ティムが地上２〜３m程まで降りてきたところで
フラッグの機体、右膝の辺りから大きな軋みと音が響いてきた。
周りの人間が咄嗟に逃げ出す。

「ティム！飛び降りろ！」

グラハムが顔を青ざめ、息子の名を叫ぶ。

「へ！？えええぇぇぇ！？！？」

ティム・エーカーの身体が宙に放り出される。
彼の記憶はそこで途切れていた。

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周囲は軍のメディカルカーや様々な車が押し寄せ、
一時騒然となった。


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グラハム父さんはフラッグに乗っちゃうと
現役時代に戻って大人げなくなるといいと思います！ヽ(＞▽＜)ノ
と、言う事でティム振り回される…（笑）