スェウはそのすらりとした身長に合わせてか
長い棍棒を、
イシスは機動性を重視したのか2本一対のブレードを
両手に構えている。
今回はスェウが先手を切った。
ひゅん。と空気を切り裂く音がトレーニングルームに響く。
それを縫う様にイシスの身体がスェウに近づく。
イシスが懐に入る。
スェウはそれをも計算に入れていた。
棍棒の手元に近い部分を反転させてイシスのブレードを弾く。
きぃん。と軽い金属音が響く。
ち。とスェウが舌打ちしながら
「弾けたと思ったのにな」
と小さく零す。
今の攻撃でイシスの手からブレードを離すつもりが
予測を外れたのだ。
俯いたイシスの手からブレードが離れる事はなかった。
イシスもダメージがない訳ではなかった。
軽く痺れが走ったものの、ブレードを手放さなかった。
今のスェウの攻撃に間合いを広げられた状態のイシスは
少しばかり不利な状況に持って行かれていた。
スェウに向きを直してイシスが攻撃に出る。
両手のサーベルを器用に動かし、
スェウの棍棒を絡めとった。
棍棒が宙に舞う。
振り返る事なくイシスは無防備になったスェウに飛びかかる。
一瞬の隙を取られて、スェウがそのままの勢いで押し倒される。
イシスは勢いのままスェウを組み敷く。
イシスがブレードを逆手に持ち替えてスェウの顔面すぐ横に突き立てる。
「そこまでだ!2人共。」
アレルヤの制止の声はスェウに聞こえたものの、
イシスが攻撃を止める事がなかった。
イシスの反対側の手にあるブレードが振り下ろされてくる。
瞬間。
「そこまでだっつってんだろ!!」
イシスの腕を掴んでいたのは
いつの間にやらトレーニングルームに入ってきていた
アレクセイ・ハプティズムだった。
「アレク!!助かったよ。」
ホッとした表情を見せながらアレルヤが3人に駆け寄った。
「親父!イシスちゃんと見てたか!?
コイツ、すげぇ目してたぜ!?」
アレクがイシスの腕を掴んだまま
父親であるアレルヤに向かって声を上げる。
そのやり取りを聞いているのかいないのか
イシスがスェウを組み敷いたまま、頭上の2人に向かって言い放つ。
「まだ相手が生きている。」
「「もう十分だ!!」」
親子に声を揃えて言われると、
イシスはブレードを2人に向かって振り上げた。
とっさに2人が離散する。
その隙にスェウが起き上がる。
「イシス!!」
アレルヤが止めようと声を上げる。
「何なんだよ!コイツ!!」
アレクセイがイシスをみて声を荒げる。
「2人共どけ!!」
軽く息をあげたスェウが武器の並んでいる壁に
据え付けられた棚から威嚇銃を手にイシスの制止に向かう。
「今、そいつの相手は俺だよ。俺が押さえる。」
イシスがゆるりと振り返る。
「…イシ…ス…?」
その視線を捉えた途端、流石にスェウの背筋にも冷たいものが走る。
イシスは黙ったままスェウに向かってブレードを持ち直し
まっすぐ向かって行く。
スェウが引き金を引く。
模擬戦用のゴム弾がイシスに向かって行く。
スェウは2発目を撃った。
1発目はイシスの左手元、振りかざした手元のブレードを。
もう1発は右肩に。ゴム弾がばしり!と音を立てて命中した。
その弾みでイシスの身体がバランスを崩し勢いよく後方へ吹き飛ばされる。
そのまま壁に叩き付けられる状態になったイシスは
そのまま気を失ったかの様にずるりと崩れ落ちる。
それを確認した後、スェウの口から軽い溜息こぼれた。
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