今回はイシスが初めてだということもあり、
慣らし程度に進めて行こうとトレーナーのアレルヤ・ハプティズムが
準備の為のストレッチ、装備やサポーターの説明などを
軽くレクチャーした。
同条件でとの事で、素手で手合わせしてみる事となった。
お互いにサポーター類の防具はついている。
イシスは要らないと言い張ったが、
万一、大けがでもすれば
次のテストやシミュレーションに差し障るとの事で
了解して装備を身につけた。
「テストは制限時間付き。制限時間は5分。
それぞれに装着しているプロテクターにセンサーがついてる。
センサーが許容量を超えた段階でブザーが鳴る。
相手のブザーを鳴らした方が勝ちとなる。」
「はじめ!」
アレルヤの声でテストが開始された。
先に1歩踏み出したのはイシスだった。
ぐっと膝を曲げて低くかがみ込み、
下からスェウの身体に向かって腕を薙ぐ。
スェウも半歩下がり、イシスのそれを受け流す。
幾ばくかの攻防をやり取りしていたが
イシスの方が攻める形になっていた。
スェウも受け身ばかりは取っていられない。
様子をうかがいながら反撃に向かう。
イシスの足が蹴りを入れる体制になり
脚があがった瞬間、スェウが足を掴み放り投げる。
「…っ!!」
放り投げられ、バランスを崩したイシスはその瞬間にも
回転しながら体制を整え、上手い具合に着地する。
スェウは、ヒューと口を鳴らしながら
「やるね」と一言呟きながらもイシスに向かって行く。
しゃがんだ状態で着地したイシスは正面から向かってくるスェウの
腕と肩を上手い具合に掴みながらスェウ自身の勢いを利用して
背負い投げのような状態へ持って行く。
スェウの長身がものすごい勢いで床に叩き付けられる。
「うわっ!!」
スェウの口から声が上がる。
ビーーーーーーーー!
スェウのプロテクターから大きなブザー音が鳴った。
「えーーーーっ!?」
嘘だ!と言わんばかりにスェウが声を上げる。
「当たり前だろう?それだけ勢いよくぶん投げられちゃったらね」
苦笑しながらアレルヤがスェウに手を差し伸べる。
スェウがアレルヤの手を取りながら立ち上がる。
「おい…イシス…お前なんかやってた?
俺、放り投げられるのなんてスゲー久しぶりだぜ?」
「んー?…まぁ…いろいろ♪」
にっこりと笑いながらイシスが答える。
その笑顔を目の当たりにしたスェウは
笑顔が子供っぽくて可愛いなとうっかり思った自分に頭を振る。
「アレルヤ!もう一回出来るよな?」
スェウの声にアレルヤは時計を見遣る。
「うーん…少しタイムオーバーにはなるけど…
君たちがそれでもよかったら…もう一回だけなら出来るよ。」
少し困った様にアレルヤは笑みを返す。
「じゃあさ…次はエモノありにさせてくんね?」
悪戯を思いついた子供のような顔をしたスェウは
アレルヤに許可を求めた。
「イシスは…?大丈夫かい?
無理なようならはっきり言っていいんだよ?」
「大丈夫!…エモノって…武器使用で行くのか?」
心配する様にイシスをみるアレルヤとは対照的に
笑顔のイシスがいた。
「じゃあ、今日は最後に一回だけだよ。
自分の得意とする武器を使ってやってみよう。」
トレーニングルームに設置している武器は
トレーニング専用に擬似的なものを置いてある。
ある程度の安全性はあるものの、
使い方次第では相手に大けがをさせかねない。
アレルヤはこの2人なら大丈夫だと判断したのだ。
「じゃあ、俺はこれな。」
スェウが手にしたのは棍棒であった。
長さは120センチ程度か。
「俺は…これを使わせてもらう。」
イシスが手にしたのは一対のブレイド。
2本で一対を成している。
「じゃあ、ルールは先程と同じ。5分以内に
ブザーが鳴るか、5分後にダメージの大きい方が負けだ。」
スタート!
アレルヤの合図とともに再びトレーニングルーム内に緊張した空気が流れた。
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小さい子が大きい子を投げ飛ばす光景は見てて気持ちいいものです(笑)