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戦闘中に於いても、まだ緊迫する程でない状況でもある事から
ちょうど『帰還日』に指定されていた為に
スェウはアイルランドの自宅に帰っていた。
「ただいまー。」
「あ、お帰りスェウ。どうだった?」
「…墓参りにどうもこうもないだろ?母さん。」
「…確かに。」
軽く笑いながら、母は息子に声をかける。
「晩ご飯、出来たからさめないうちに食べなさいね。
かあさん、もう少ししたら出かけなきゃいけないから。」
「あー…ラボ?」
「そう。」
「なぁ…母さんはさ、どう思ってるの?」
「え?なにが?」
「アニュー・リターナー。」
「ああ、彼女ね。」
さらりと言う母にスェウは今まで聞きたかったが聞けなかった事を
思い切って聞いてみる気になっていた。
「…未だに父さんは彼女を愛してるとか言ってるのをどう思ってる…?
女性なら…辛くないのかなと思って。」
「あら珍しい。なんで今更?」
くすぐったそうに笑いながら彼女は問い返す。
「うーん…今だから。…それじゃ理由にならない?」
息子の問いかけに母はゆったりと微笑みながら息子に答えを示した。
「お母さんはね。『ライル・ディランディ』の全てを愛してるから。」
「それって…答えになってない気がするんですけど。」
訳が分からない、そう言いたげな息子の視線に
母は悪戯っぽく微笑む。
「だから、『私』はね、スェウ。
『アニュー・リターナーを愛したライル・ディランディ』を含めた
彼の全てを愛してるから、あなたを産んだの。」
「…え………」
目を丸くした息子に彼女は続けた。
「つまりはね、私は勿論ライルに愛してもらえたわ。
でもね、私もキチンとライルを愛している。
だから、あなたがいる。
今のライルだけではダメなの。
ライルの過去…全てがなければ今のライルはいなかった。
だからこそ、アニューも含めた彼を愛してるの。
だから、アニューの墓もあそこになければいけないし、
ライルの気持ちも全て受け入れる。
だから私はスェウ・ディランディの母になれたのよ。」
少し照れくさそうに胸を張る母親をスェウは見つめていた。
「…スェウも、もう24だものね。
本気で好きになる人がいても当たり前か。」
「…まぁ…ね…」
歯切れの悪い返事を返す
「ほー。いるんだ。」
ヤマがあたったと言いたげな母は笑みを浮かべた。
それに反応する様にスェウはぐっと一旦言葉を詰まらせた
その後、暫く唸った後、吐き出す様に告げた。
「…あー…いるんだけどさ…
今、それを言えるような状況じゃないかと思って…。」
「あら…。でもそれは言わないと
いつ言えるか判らない状況でもあるんじゃないかしら?」
「…え?」
母親の発言にスェウは目を丸くした。
母はスェウを見据えて忠告とも言える発言を息子に伝える。
「だって、そんな状況だからこそ、
いつ言えるのか判らないなら
言える時にはっきり言ってあげなきゃ。
相手もそう言う事は感じ取られているのよ。
うやむやな状況だと集中力を落としかねないわ。
お互い戦況下にいるのなら尚更…だと思うわね。」
「…かあさん…」
「スェウ、あんたの『帰還日』が終わるのはいつだったかしら?」
「あー…明後日。」
「その時は彼女に会えるの?」
その質問にスェウは端末のスケジュールをチェックした。
「あ、うん。」
「じゃあ、言ってあげなさいな。
彼女は待っているかしら?」
そう言いながら、母親、アーサ(Asa)・ディランディは
自宅を後にした。
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自宅駐車場にあるランチア・ラリーのドライバーズシートに
アーサは座っていた。
彼女はふと考えるような素振りを見せながら前を見据えていた。
だが、その視線は目の前を見ているのではなかった。
彼女の瞳は今、普段の紅い瞳ではなく
人にはあり得ない金色に輝いていた。
彼女は一人で車内にいるのにも関わらず
誰かに話しかけるような視線を真っ直ぐに向けている。
口元も動かない。動かす必要がないのだ。
彼女が身につけている脳量子波を使い、
離れたところにいる『彼』に連絡を取っていたのだ。
『…聞こえてる?』
『ああ、大丈夫だ。こうやって連絡を取るのは久しぶりだな。
…アニュー。』
『その名前はもう呼ばないでちょうだい。
今の私はアーサよ。』
『アーサ・リース…だったな。』
『それも違うわね。もう今はアーサ・ディランディよ』
ふふ。と笑み含んだ声が直接ティエリアの脳に響く。
その後、アーサはティエリアに聞いた。
『…ライルは元気かしら?』
『ああ。もう暫くしたら地上へ降りる。
久しぶりだろう?ゆっくり会っておくといい。』
『あら、スェウと入れ違いなのね。』
『済まないな。家族水入らずにならなくて。』
『仕方ないわ。そろそろ戦況も厳しくなる頃合でしょうし。
…話は変わるけど、ティエリアは知ってた?』
『何がだ?』
『スェウったら、誰か好きな人がいるらしいんだけど。
ライルはまだ何も言ってこないし…
ティエリアなら知ってるのかしらと思ってね。』
『ああ…多分。』
『多分?』
『憶測の域をすぎてはいないが…ややこしい相手だぞ。』
『…ややこしい?
回りくどく言ってないで。』
『…イシス・イブラヒム。』
『刹那・F・セイエイの…娘…?』
『そうだ。…意外か?』
『……複雑ね。』
複雑。といいながらもアーサの口元は微笑んでいた。
息子ももうそんな歳になるのかと、
母親としての感慨があるのだろう。
『…そうだろうな…』
『…この話は、いずれ近いうちに直接会って話しましょうか。
あまり長く続けているとよくないわ。』
『よくない?』
『スェウが感づくもの』
『…そうなのか?』
『まだ判らないけどね。可能性はあるわ。
そちらでもスェウの様子、見ていてね。』
『………判った。』
そこで、2人の距離をものともしない
脳量子波による会話は終了した。
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あー…やっとスェウのお母さん登場です。
ええ…容器は違うけれど…あの人なんです…なんと!(えー)
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びふぉわあふたー、ここに極まれり。
ええええええええええええええええ!
そうきましたかそうくるかそうきたかぁ!
ものすごい勢いで納得しましたw
しかし旦那は知ってるんでしょうか・・・・いや、ティエだけでしょうね。
納得していただけましたか!www
びっくりしましたか?(笑)
しかしダンナさん…知ってるんでしょうかねぇ…?
どうなんでしょうねぇ?(*´∀`*)えへえへ。