20-years-after

グラハム・エーカーの息子、ティム・エーカーは
その日、ユニオン軍、カリフォルニア基地に来ていた。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

ティムがこの基地に来るのはかれこれ４年ぶりになろうか。
今日まで彼は頑に父親の仕事場であるこの基地に来るのを避けていた。

４年前、２３３２年。
ティムが１１歳の時
この基地にソレスタルビーイングの武力介入による
テロ襲撃事件があった。
海に近く、少数精鋭をモットーにしているため、
基地自体の規模が小さく見える為か
テロにとっては外見上、比較的目標になりやすい基地であるようだ。
そんなテロ襲撃の騒動で、
ユニオン軍の研究機関に所属しており、
父親同様、この基地に勤めていたティムの母親は
命を落とした。

それから父と２人で生きてきた。
慣れない家事や学校で慌ただしく日々が過ぎて行ったせいも手伝って
基地に足を運ぶのが辛いと言う気持ちは若干薄らいでいたものの
やはりその場所に行くのはティム自身の中で引っかかるものがあるのだ。

それを変化させる事件があった。
２年前、父が若い頃戦った人物の子供が突然ティムの前にあらわれた。

刹那・F・セイエイ。

ティムの母親が命を落とすきっかけになってしまった組織の
ガンダムマイスター。
父親に『生きろ』と伝えた人物の子供。
見た目は自分とさほど変わらない見た目の子供は
父と同じ目線で、父と同じレベルの話をしていた。

何故？彼は…刹那はあれだけの行動をとれるのか。
何故自分より遥か先を歩いてる様に見えるのか。
気にかかっていた。
父に問うと、『それは自分で探すものだ。彼はそれを知ってる』と、言った。
そう言うものは自分で見つけ出さなければいけないとも。

そんな基地で、今日は２年に１度のフェスティバルが行われる。
ティムはその会場に居るのだ。
会場のあちこちで店が出ていたり、パフォーマンスをしていたり
かなり賑やかなものとなっている。

その当日の数あるアトラクションの一つに
古い歴史ある機体のデモンストレーション飛行を始め、
過去、軍事力として活躍した期待のデモンストレーションも含め、
様々なアトラクションが行われる。
その中にカスタムフラッグのデモンストレーションがある。

今回、そのカスタムフラッグにティムの父、グラハム・エーカーが
操縦桿を握る予定になっている。
今日、ティムはそのカスタムフラッグに
乗せてもらえる予定になっているのだ。

搭乗準備の時間が迫っている。
ティムは自分の腕時計を見て少し気持ちを焦らせた。
父親の乗るフラッグのデモンストレーション。
そのコクピットにこっそり乗せてもらう約束をしていたのだ。
フラッグのデモンストレーションが行われる前に
古いステルス機の離陸がある。
それを目安に準備中の格納庫に忍び込まなければ
父親についてフラッグに乗せてもらう事が出来ない。
コクピット内部なんて滅多に見れないものだ。
軍事的な装備に興味が有る無しに関わらず、
男の子として単純な好奇心があった。
ティムの足が速まるのは当然の事だろう。


クリックで拡大表示

そんなティムの視界にステルス機であろう機体がゆっくりと
格納庫から移動して行くのが見える。

「うわっ！もしかして！」

ティムはその遠巻きに見える光景を確認しようとしたが
遠くてなかなか判りづらかった。
彼は周りを見回し、近くに居る男性を見遣った。
そして、

「失礼します！」

そうはっきり男性に声をかけると
男性が手にしている双眼鏡を奪った。

「お！おい！小僧！！」

いきなり双眼鏡を奪われた男性は
焦りと若干の怒りを含めた声をティムに投げつけた。

「失礼だと言った！」

ティムは声だけを男性に向け、
視線は外さずに目標を見定めた。

既にステルス機が準備万端に
離陸を待つ状態になっていた。

「うっわ！！ヤバい！！」

そう叫んだティムは双眼鏡をもとの持ち主に投げ返すと
そのまま勢い良く格納庫に向けて駆け出した。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

カスタムフラッグ・格納庫入り口。
そこに人待ち顔でそわそわとしている人物がいた。

グラハム・エーカー。

かつて、カスタムフラッグの機体を操り
ガンダムと幾度と無く対峙し、生き残ってきた。
その彼が今待ちわびている人物が遠巻きに見え始めた。
自分の息子である彼が走ってくるのが見える。

「遅いぞ！」

そう声を上げて息子を責める父親の表情は台詞と相反して
楽しそうだった。

「ごめん！」

そう言うのが精一杯な位、息を切らして走ってきた息子と
父親はフラッグの機体のすぐ傍にあるロッカールームへと消えていった。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

「おい、まだあの子は見つからないか？」

「はい。基地中探していますが…まだ…」

「基地から出た形跡はないんだね？」

「ええ。それは確実です。」

フラッグ機が準備を整えている間、
管制室で人を探している男性がいた。

ビリー・カタギリ。

同僚であり、本日デモンストレーションを行う
フラッグのパイロットである
グラハム・エーカーの息子
ティム・エーカーを探している。
正確には、管制室から動けない自分のかわりに部下に探させているのだが。

ビリーは、デモンストレーション前に管制室から
彼の息子に声をかけさせてやろうと探していたのだが…

それがいない。

「カタギリ、そろそろ時間だ。出してもいいか？」

音声通信でグラハムの声が管制室に響く。

「あー。準備はいいんだが…
君に出撃前にティムと通信させてやろうかと探しているんだが…
ティムがいないんだ…」

「あー？ティムか？
ああ。それなら心配ないぞ。」

その声とともに管制室のモニターにフラッグのコクピットが映る。

コクピットの様子がモニターに映った途端、
驚きのあまりビリーは目を丸くし、口をあんぐりと開けていた。

今まさに探しまくっていた少年が
シートに座る父親の傍らにしがみついている。
少年は興味深々といった様子でコクピットを見回す。

その様子がモニターに映し出されている。

「あ！ホントだ！
こんな風に見えるんだ。
おーい！おじさーん♪」

「ティムならここにいる。」


クリックで画像拡大

いつの間にかパイロットスーツを着込んだ親子を
モニター越しに確認したビリーは大声を張り上げていた。

「何やってんだ！！ティム！！
すぐ降りてこい！！！今すぐだ！！
グラハムも何やってる！？
そんなところに子供を連れて入っていい訳ないだろう!!!!
降ろせ！今すぐにだ!!!」

「ティムなら大丈夫だ。そんなに心配するな。」

のんきなフラッグファイターと、
モニターに向かって満面の笑みを浮かべ、
ひらひらとこちらに手を振るその息子に
ビリーはますます怒りをあらわにしていた。

「なにが大丈夫だ！君たち親子に何かあったら
彼女に会わせる顔がない！いいから早くティムを降ろすんだ！」

「断固辞退する！」
「辞退するじゃない！」

殆ど押し問答のやり取りが管制室に響き渡る。

「おじさん、僕なら大丈夫だからさ。」
「将官の許可も取ったぞ。」

そこに割り込む様に管制官の声が入る。

「カスタムフラッグ、出撃時間です。準備はいいか？」

「ちょっと待った！」

声を上げるビリーを無視する様にコクピットからグラハムの声が上がる。

「いいぞ！ハッチを開けてくれ！」

「おい！ティムを降ろしてから行け!!!
人の言う事を聞かんかー!!!!グラハム!!!!」

その声を制するかの様なビリーの叫びも虚しく
カスタムフラッグは基地の上空へと浮かび上がって行った。


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

子供のような父親と弟のような息子になればいいなとか
そんな感じで書いてますが…
ティムもちょうど思春期反抗期、複雑な時期というところで
そう言うかかわり合いがあるところを次に見せればいいなとか思いつつ
続きをちまちま書いていきます。お楽しみに♪

あ、ちなみにこの話のティム、２次成長終盤だと思うので
身長は大体お父さんの肩を越える（父親の頭半分下）くらいの
背丈があると思って下さい（＾＾）v具体的になると
おおよそ165~170辺りですかね、父親が180なのを仮定してですがwww