「アレルヤやロックオンと違って…
僕は刹那に対して否定的な態度を取っていた。
お互い最初の印象は最悪だったな。」
次はティエリアが話し出した。
「刹那と僕は似ていたのだと今なら思う。
だからこそ反発しあっていた。
お互いに信じるものに対して揺らぎがなかったんだ。」
「父さんの…信じるもの?
思いつかないな…父さんは…よく言ってた。
『この世界に神なんていない』って。」
イシスの言葉にティエリアは微かに微笑みながら溜息をついた。
「…それだけは変わらず言い続けていたんだな…」
「父さんの…信じていた…ガンダム…」
「刹那・F・セイエイが搭乗したガンダムは2機あった。
1機目は2307年に初めて人前に忽然と出現した機体。
『ガンダム・エクシア』そこに搭乗していた刹那はまだ16歳の少年だった。」
「16…世界を騒がせたガンダムに乗っていたのは
たかだか16歳の少年だったんだ…俺より年下だったのか…」
驚きを隠せない様にスェウが呟く。
「1年の戦争が終わり、4年の歳月が過ぎた。
その間に開発されたのが、2312年から刹那が搭乗した
『ガンダム・ダブルオー』ここに格納されているあの機体だ。」
「00の活動はイシスも知っている部分が幾許かあるかとは思う。
アフリカ・タワーが倒壊を免れた事件、その後のメメント・モリへの攻撃。
ニュースなどの情報工作がなされていた事は
ここに入ってからの講義等で聞いてるかと思う。」
「父さんは…ソラン…いや、刹那は…その辺りは一切教えてくれなかった。
ガンダムに乗って、第一線で活動してた事も。」
「そりゃあそうでしょう?自分の父親がガンダムに乗っていた事実を知れば
イシスからガンダムに関する情報を聞き出そうとする輩が出るとも限らないわ。
お父さんは、あなたを守る為に敢えて話さなかったのね。」
イシスの呟きに似た声に口を挟んだのは意外にもナターシャ・ハプティズムだった。
「刹那は…ソレスタルビーイングに対して
いや…ガンダムに対して疑う事をしなかった。
疑おうとすればその要素はいくらでもあったのかもしれないし
今もあるんだろう。
刹那は、それでも…自分を、世界をまっすぐに見据えていた。」
ティエリアの言葉を再びアレルヤが引き継ぐ。
「そうだね…彼は…引き金をひきたくても引けない人間の声を…
悲鳴を…ちゃんと聞けている人間だった。
成人した彼は、4年の間に世界の声を聞いて来ていたんだね。
4年の間、捕虜として動けなかった僕から見れば
驚く程の変化だった。」
「死んだ奴を美化する事はいくらでも出来るさ」
アレルヤの話にライルが割り込んだ。
その一言に全員が顔を上げた。
アレルヤ、ティエリアは緊張した表情を浮かべていた。
彼が何を言おうとしているかが予測できたからだ。
「アイツは…刹那は…」
「刹那・F・セイエイ…ソラン・イブラヒムは
自分の両親を殺害した。」
ライルの言葉を遮る様に声を上げたのはイシスだった。
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