「…知っていたのか…」
ティエリアの声にイシスが頷く。
「…父さんが、元KPSAにいた事、
そこで起こした過ち…
父が…兵士として人の命を奪っていった事は聞いてる。
だから…だからこそ命を守り、
自分が生きる事の大事さを強く意識していた。
生きていかなければ償えないものもある。
『生かされているうちは、精一杯生きろ。
そこで得られる答えが必ずある。』と言ってた。」
「そして…病床で…父さんは…
『すまなかった』と。
ずっと…謝罪の言葉を。」
そういいながら、イシスはライルを見つめた。
ライルの表情が驚きに変わりながらもイシスを見つめる。
イシスは父と同じ瞳でライルを見つめる。
「『ロックオン』に、『すまなかった』…と。
そして…『ありがとう』と。
俺が、『ロックオン』に会えるかどうか判らないというのに
ずっと、『伝えてくれ』と願っていた。」
「いや、刹那はきっと
君が僕らに会う事になると予測していた。
だからこそ、君にトレーニングをさせたり
データを残した。」
ティエリアの言葉にイシスが振り向く。
「それは…自分の身を守る…」
「シミュレーターに乗る事がか?」
イシスの否定の言葉をティエリアが遮る。
「…ティエリア…?
イシスのお父さん…刹那は、
一体今までの空白時期に何してたの?」
ナターシャの質問にティエリアが答える。
「彼は…ラグランジュやプトレマイオスから離れて
活動に助力していた。…名を隠して。
彼は、彼自身の意志で我々から忽然と姿を消した。
今、ここで詳しくは話さないが。
おそらく、イシスが言われていた
『仕事』というのもこの範疇の事だろう。」
「父は、仕事に関する事は機密事項が多いからと
俺には教えてもらえなかった。
仕事で数日家を空ける時には、よく近所の人や
シッターがやってきて、面倒を見てもらっていた。
その誰もが、父の仕事に関して知っているものはいなかった。」
「僕も、ライルも、アレルヤも…
イシスから渡してもらった資料を見るまで知らなかった。
只…あの彼が
ソレスタルビーイングの表舞台から忽然と姿を消してまで
そうまでしても守りたいものが出来た。
僕はそれに驚愕している。」
「僕らはね、
刹那に子供が出来るなんて
考えも及ばなかったんだよ。
それだけ、彼は真っ直ぐに戦争根絶に向けて突き進んでいた。
彼をそうさせたのは…
彼が幼少時代を過ごした非日常の毎日からだったろうね。」
「ここ数週間、トレーニングや普段会っていると
イシスは紛れもなくアイツの子供なんだなと感じるな。」
ライルの言葉に再びアレルヤが続く。
「うん。シミュレートでの仮想ミッション、
ガンダムの扱い方はそっくりだね。」
「今日のところはここまでにしておこうか。
そろそろ時間も押している。
明日に響くといけない。」
時刻を見るとかなりの時間が過ぎていた事に気付いた面々は
また後ほど、と誰からともなく声を上げ、各自散開していった。
部屋を出る際、ティエリアがイシスに声をかける。
「イシス、後で渡したいものがある。取りにきてくれるか」
「ティエリア…?…わかった。」
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