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『あなたは…お母さんをよく知らないまま育ったのね…
いずれ、あなたも母になる時が来るかもしれないわ。
女性なら、それを考える時が来る。
あなたにも…それを知る時が来るわ。
両親の血を貰った事、胸を張ってね。
私も…沙慈も…一時は彼を憎みもした。
けれど…今は彼に感謝してもしきれないのだもの。』
ピアスを持った自分の手を包む様に握りながらそう言った。
ルイス・ハレヴィ。
強い女性だ。
そう感じずにはいられなかった。
父から聞いた、母の素性。
それに伴って経験して来た事に因る警戒心の高さ。
自分が女性であるという事を抑えて来ていた。
自分にもうそれがきかなくなて来ている事を突きつけられた。
「そろそろ…はっきりさせなきゃな…」
かつて、父が使っていたその部屋に今は娘の決意が零れていた。
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ラグランジュ-3-0。食堂。
ライルはティエリアと対峙していた。
「あー? 休暇ぁ?」
「そうだ。」
「イシスが?…何だって今頃…」
「僕が出した。彼女は今、東京だ。」
「…ティエリア… お前…何を考えてる?」
「…イシスを『彼ら』にあわせる様に仕向けた。」
あっさりと回答を告げるティエリアにライルは目を見張る。
「ティエリア…お前…」
「彼女は、そろそろ決着を付けなければならない。
あの子には…ここへ来る以前から声をかけられている組織がある。」
「…あの『国』か…。」
「そうだ。彼女ももういい大人だ。
そろそろ決断をしなければいけない。」
「それと、今回の東京との関連が見えないんですが…『艦長』?」
悪戯っぽく訪ねる『仲間』にティエリアはじろりと目を細める。
「…あそこには沙慈が住んでいる。
隣の部屋の監視も頼んである。
そこへイシスを向かわせた。
…わからないか?」
「…つまりは…あの家族にあって…
イシスに何か感じ取ってもらえたらと…
そう言う事か。」
ティエリアは黙する事で肯定した。
「…それってさ…ある意味博打じゃないのか?
あの子があの家族に出くわさなければ?
掴み取るものがなければ…?」
「あの子はそこまで馬鹿じゃない。
あの両親にあの子あり。だ。」
「あー…そ。
…結果を御覧じろ…と?」
「彼女は、既に策を講じてある。
僕も、付き合わされるから
暫く地上に戻る。」
「おー。珍しい。
あれ?だとしたら…アレルヤと入れ違いか。」
ライルは、端末に映し出したカレンダーを確認しながら言った。
「ああ。よかったらライルも一旦下りるといい。
会えるうちに妻に会っておけ。」
「…そうだな…
墓参りもしておかなきゃな…」
ライルは、小さな笑みを浮かべながら呟いた。
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