プトレマイオス2・通称トレミー。
地上に降り立って、カレルやイアンがフル稼働でトレミーの修復作用を行っている。
アニュー・リターナーも休む間もなく駆け回っていた。
「アニュー、忙しいところすまんが
第3倉庫にしまってある
光学粒子マニュアル取って来てくれないか?」
イアン・ヴァスティが少し離れたところにいるアニューに頼む。
アニューがイアンを振り返ると、まさに手が離せない状況なのが
手に取る様に判る。
自分の作業はまだ余裕がありそうだと判断したアニューは
イアンの頼みを快く引き受けた。
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トレミー内、第3倉庫。
居住区に比較的近いそこはそれでも薄暗いが、整然としていた。
アニューは倉庫の照明スイッチをつけてから
天井までビッシリとファイルが詰まった棚を前に
自分を鼓舞する様にふん!と鼻息をつく。
「さぁて、どこにあるでしょうかね…」
ファイルの壁を見上げながらアニューは気丈に呟いた。
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トレミー通路。
そこに長身の人影が歩いている。
襟足の長い、栗色の髪。
瞳と同じグリーンのユニフォームを着た人物は
通りがかった倉庫に明かりがついているのを見かけた。
何気に中へと目をやると、以前からよく話をしている
個人的に少し気になってはいる、その女性が
ウサギ宜しくぴょんぴょん飛び跳ねている。
「…何やってんだ…?」
小さく呟きながら暫く見ていると
どうやら彼女は
ギリギリ手が届くか届かないかの位置にある
ファイルに手を伸ばしているようだ。
「よっ!ほっ!あとちょっと!」
………かわいい…………
小さなかけ声を掛けながらぴょんぴょんしている彼女を見ていると
自分の顔が微笑んでいるのが判る。
ライルは気付かれない様にそっとアニューの傍へ近づいた。
そして、ひたすら彼女がぺたぺたと触れているファイルの背表紙を掴んだ。
「…目標はこれかな?」
「…!!……」
イタズラっぽい笑みを浮かべながら
背後からアニューを覗き込むライルに気付かなかったアニューは
声にならない悲鳴を上げた。
「…ライル!…いつの間に!」
「前を通ったら、カワイイ兎がぴょんぴょん跳ねてたのさ。」
ロックオン…ライル・ディランディは
肩越しに見上げてくるアニューを覗き込みながら
軽くウィンクをしてファイルを右肩に担いでいた。
「ヤだ!いつから見てたの!?」
ほほを軽く赤めながらアニューはライルと向かい合う様に振り返る。
「ついさっきだ。倉庫が明るかったから。」
ライルは手にしたファイルをアニューに手渡しながら言った。
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そのあと、ライルは少し時間を持て余していた事もあり
ファイルを数冊手にしながらアニューと一緒に通路を歩いていた。
トレミーの通路が途切れ、外に面した場所。
本来はそこに壁があったはずの場所までやって来た。
「ここでいいわ。ありがとう」
「どういたしまして。」
微笑むアニューの言葉に従って
ライルは近くにある作業台にファイルを置いた。
「さて、日暮れまであと少し、
もうひと頑張りしなくちゃ。」
沈み行く夕日を眺めながらアニューが独り言の様に呟く。
夕日に照らされたその横顔をライルは見つめていた。
視線を感じたアニューはライルと目線を合わせる。
「…ライル…?」
何か言いたい事があるの?と
言わんばかりにきょとんとした表情のアニューを見て
ライルは自分がアニューに見とれていた事に気付いた。
ライルの手が自然とアニューの柔らかな髪に触れていた。
アニューもゆったりと微笑みながら
されるがままに任せていた。
「アニュー…」
髪に触れていたライルの手が肩にまわされた時
自然に2人の距離が近づいた。
どちらからともなく、自然に唇を重ねていた。
「…あまり…無理すんなよ。」
唇が離れる時、近すぎる距離で甘く囁く、自分を気遣う声。
「…ありがとう…ライル。」
微笑むその表情が赤いのは夕日に染められていただけではなかったはずだ。
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あぁぁ こういうの大好きぃぃぃぃ!!!!
素晴らしいです(*´∀`*)
>銀サチさん
ありがとうございますー!!(>▽<)
こうやってご感想頂けると俄然はりきっちゃいますよ!
また、たまーにこうやってSSあげていけたらなぁと思ってます♪
是非読んでやってくださいませ!